乾癬の治療

乾癬の最新の治療

バイオロジクスによる乾癬の治療
(ヒュミラ、レミケード、ステラーラ、コセンティクス、トルツ、ルミセフ、トレムフィア、スキリージ、イルミア、シムジア、ビンゼレックス)

乾癬の治療が、塗り薬から注射になりました。


当科は今までの治療で治らなかった重症の患者さんにも効果がある、新しい治療「バイオロジクス(バイオ製剤)」を行っています。この新しい治療はすべて保険適応です。兵庫県でこの新しい薬を投与できる病院は限られています。さらに、土曜日に乾癬にバイオロジクスが投与可能な病院は、阪神間では当院のみと思われます。加入している保険組合によって値段が違いますので、負担金額の説明も当院で行っております。

この新しいお薬は、既存の治療では良くならなかった患者さんが対象です。約80%の患者さんで皮膚炎がほとんど気にならなくなる状態が達成できるなど、画期的な効果があるものの、副作用が発生するリスクの高い方がいらっしゃいますので、事前の検査をしっかりさせていただいております。また、従来型の治療と違って、高齢者の方でも安全に使用できるようになってきました。

当院で投与できる乾癬の生物学的製剤(バイオロジクス、バイオ製剤)は多数あります。当院では乾癬患者さんの数が多いため、下記バイオ製剤すべての投与経験が豊富にあります。
リンク一覧:
レミケード(インフリキシマブBS)
イルミア
シムジア
ビンゼレックス

なお、どの製剤が一番良いのかは患者さんによりますので、一概には言えませんが、乾癬性関節炎(関節症性乾癬)という、乾癬に関節炎を伴っている患者さんには生物学的製剤が関節破壊予防の観点からも望ましいと考えています。

膿疱性乾癬という、入院を必要とするような重症の乾癬患者さんにも、生物学的製剤を投与しております。当院は膿疱性乾癬という重症の乾癬をかなり多く診察している病院であり、本皮膚科学会の膿疱性乾癬診療ガイドラインの作成にも参加させていただいております。コントロール不良の膿疱性乾癬患者さんを、大きな病院からご紹介いただくこともあります。



顆粒球除去療法(アダカラム)による乾癬の治療

「血液から白血球(顆粒球)を除去する」という治療ですが、当院では重症の乾癬患者さんに対して顆粒球・白血球除去療法を以前から行っております。当院は治験にも参加させていただき、この顆粒球除去療法は、今では保険適応となりました。生物学的製剤が使用できない合併症のある重症の乾癬患者さんの救命に、顆粒球除去療法は大切な治療法であると考えております。バイオ製剤がダメだったら?という不安を払拭する治療法です。


アプレミラスト(内服剤)による乾癬の治療
関節症性乾癬や尋常性乾癬に上記のバイオ製剤は著効しますが、なかには感染症や悪性腫瘍といった合併症で使用できない患者さんもおられます。2017年3月から保険適応になったアプレミラストは免疫抑制作用がないため、例えば、癌の治療中の乾癬患者さんでも使用可能です。ただし効果は個人差が激しいです。


シクロスポリン・MTX(内服剤)による乾癬の治療
私が医者になったころからある、伝統的な内服薬ですが、毎月、採血検査による安全性の確認が必要ですので、大きな病院でないと処方していない傾向があります。皮膚炎には著効しますが、関節症状には効きません。


その他、乾癬外来でできること

乾癬の入院治療

当院では重症の乾癬患者さんの入院治療も行っています。特に発熱を伴うタイプの重症な乾癬(膿疱性乾癬)の患者さんは日常生活が困難であり、入院で対応させていただきます。


乾癬患者さんの生活指導


どの医者も同じように、タバコ・お酒・刺激物は尋常性乾癬の敵だと言うわけですが、患者さんによって気をつけるべきポイントが違うことも多いと思います。結局は毎日の生活習慣の改善が必要になってきます。・・・そういえば、せっかく10年くらい乾癬がまったく出ていなかったのに、ちょっと理由があって体重が20kg増えたら10年ぶりに乾癬が再発してしまった患者さんが来院されました(よくあるパターンです)。せっかく治ったのに、と思いつつ治療再開ですね。。。


乾癬患者さんの合併症の検査

今までは治療法を取り上げてきましたが、そもそも、なぜ乾癬が発症したのでしょう。中には、乾癬の悪化原因として、最近内科で開始した内服や注射の薬が原因だったり、扁桃炎があったりして、悪化要因を除くことで軽快する患者さんがいます。乾癬外来では、まずは血の検査(採血)などで、そもそも乾癬の原因・誘因があるかも、検索させていただいております。膿疱性乾癬では遺伝子の異常で発症することが知られており、当院では遺伝子検査をすることもできます(注:遺伝子検査は保険適応外で、当医局による研究扱いとさせていただいております。詳細はお問い合わせください)。

膿疱性乾癬(限局型)・掌蹠膿疱症と金属アレルギー

最近、掌蹠膿疱症の患者さんも増えてきました。金属アレルギーは、思わぬ皮膚症状を誘発することがあります。特に、手のひらに膿が出続けるタイプの、欧米で言う限局型の膿疱性乾癬(日本は掌蹠膿疱症)の患者さんは、一度、扁桃摘出の適応の検討や、金属アレルギーの検査(保険適応)を受けることをお勧めします。


最後に・・
結局は患者さんのライフスタイルに応じた治療をオーダーメイドさせていただいております。完全に皮膚炎をゼロにしたいのか、痒くなければOKなのかによって、治療法は異なってきます。また、忙しくても土曜日に診察が可能ですし、バイオ製剤を使用すれば最終的に通院は2〜3ヶ月に1回程度で乾癬の皮膚炎がほとんど無い状態とキープできるので、社会人の方でも乾癬の治療は可能になってきました。積極的な治療を考えている方は、別に当院でなくてもいいわけですけど、乾癬外来をしている大きな病院に(一度紹介状を書いてもらって)、御相談されることをおすすめしています。

担当医の退職について
長年続けてきた乾癬外来ですが、2021年10月から、担当医である今井医師が大阪市内(野田阪神)で開業のため、兵庫医科大学を非常勤となることをふまえ、兵庫医科大学での専門外来における再診枠は月2〜3回に減りますので、地域医療経由での初診予約を終了しました。また、私が始めたころはバイオ製剤を使用できる施設が非常に少なかったのですが、現在はほとんどの基幹病院が対応できるようになっています。そこで、コロナ対策として遠方の患者様は通院のより便利な施設をご紹介しております。また、担当医である今井医師が院長を務めるクリニック(野田阪神駅前いまい皮フ科)は生物学的製剤使用承認施設に認証されており、兵庫医科大学病院と連携して生物学的製剤の投与が可能です。