2015年9月20日日曜日

なぜ重症のアトピー性皮膚炎が減ってきているのか

今日は乾癬ではなく、アトピー性皮膚炎のお話です。

兵庫医大皮膚科では、アトピー性皮膚炎も診察しております。乾癬は関西一円から患者さんがいらっしゃいますが、アトピーは西宮や尼崎の患者さんが多いです。

最近は、重症のアトピーの方が少なくなってまいりました。電車に乗っていても、ぱっと見でお顔が重症なアトピーだとわかる方が10年前に比べて格段に少なくなったと実感している方もいらっしゃると思います。この理由は、

標準的な治療法の進歩と普及

のおかげだと思います。


さすがに10年前と違って「ステロイドは怖いから塗らないように」と指導されている患者さんは皆無になってきましたが、どうしてもアトピーが良くならないステロイドを塗っても効かない!という患者さんはよく受診されます。しかし、これもガイドラインに沿った治療が行われていないというケースがほとんどで、単にステロイドの塗り方が間違っているだけのことが多いです。標準治療をするだけで皮膚炎が良くなるというパターンとなりますので、もし喘息などがあるために皮膚科以外の先生に「ついでに」アトピー性皮膚炎も診てもらっているという場合は、一度、お近くの皮膚科の先生を受診されることをお勧めします。

なお、まれにアトピーという診断が間違っている場合もあり、皮膚リンパ腫という一見するとアトピーに見える悪性腫瘍であることもありますので、特に皮膚科の先生でないお医者さんにアトピーを診察してもらっているのに数年たっても治らない方は、一度、お近くの皮膚科医の診察を受けることをお勧めします。10年以上かけて進行する悪性腫瘍ですので注意が必要となります。


2015年9月17日木曜日

80%は確率として高いか低いか?

今井です。私事ですが、思いっきり歯の治療、失敗されちゃったみたいで、かえって余計に痛くなりました。まったく、ヤブ歯医者め!成功率80%ですって言っていたのにウソだったのか!?

・・・と文句を言っておいて、じゃあ、自分のしている皮膚科診療ではどうなのでしょうか?

私が担当させていただいた乾癬患者さんのバイオ製剤の効き具合を、カルテ全員分集計して計算してみたのですが、例えば最近のバイオ製剤は、簡単言うと75~80%の患者さんで乾癬の皮疹がほとんど無くなるとの報告です(専門用語で言うPASI75、皮疹がほとんど気にならない状態になります)。これは、私が医者になったころのことを考えると驚異的に効く治療の登場で、まさに「画期的な最新の乾癬治療」なのですが、でも、実は・・・・80%の方に効くということは、そう、20%くらいの患者さんは、バイオ製剤の効きが悪いのです。しかも、現状では治療してみないと効くかどうか不明なので、事前の検査では薬が効くかどうかは分からないのです。これは最も優れたアメリカの皮膚科に行っても同じで、バイオ製剤が効くか事前に知る検査は開発されていないのです(現在私も研究中です)。いや、皮膚科なのにすごく採血されたんですけど!!という患者さん、すみません、あれはバイオ製剤の副作用が出やすい体質かどうか調べている検査なので、効くかどうか調べる検査じゃないんですよ・・・

・・・・ということで、確率的に約20%の患者さんには私も「ヤブ医者め!」って思われてることになりますね。。。しかし、現状では効かない方がいらっしゃるのは事実です。1剤目が効かなかった患者さんには、また別の(2種類目の)バイオ製剤を使うことになります。現在保険が効くバイオ製剤は4種類もありますので、一応最後には何とかなるはずですが(ブログを書いている今のところは何とかなっている)、やはり、診察には時間をかけて、治療のメリット・デメリット(100%効くわけではない)を、しっかりお話していかないといけないなと思いました。ただ、乾癬に関しては日本でもアメリカと同一水準の治療レベルがアメリカより安価に提供できる(新薬が保険適応になった)ということは、乾癬患者さんはぜひ知っていただきたいと思います。


・・・あ、でも、やっぱり歯医者は変えようかな・・・




2015年9月8日火曜日

乾癬学会に参加してきました

乾癬外来担当の今井です。
第30階日本乾癬学会学術大会に参加してきました。

当科からは顆粒球吸着療法について学会発表をさせていただきました。
この当科で行っている乾癬に対する顆粒球吸着療法が、まだまだ一般的に広まっていないということも分かりましたが、実際に今までで(当院だけで無く他の病院も含めて)重篤な副作用が生じたことが無いという安全性の高さが確立されてきたことが確認できました。

また、話題としては、乾癬の治療にバイオ製剤を使うか否か?という議論だったものが、どのバイオ製剤を使うか?、というレベルに進化してきたことを感じました。

いずれにせよ、当科で行っている乾癬治療は最先端にちゃんと追いついているということが確認できましたので、自信を持って診察していきたいと思います。

ところで、中国で皮膚科をしているPigshen Fan先生のお話では中国ではバイオ製剤はいわゆる保険適応外、つまりお金持ちだけが使える薬であるとのことでした。もちろん、日本は国民皆保険制度ですから、むしろ所得の少ない方ほど医療費が安くなる仕組みが整っており、最先端のバイオ製剤であっても保険適応で使うことが出来ます。

最後にオマケの写真ですが、学会会場から見える名古屋城です。中国や韓国の先生も参加されておりましたので、このような会場は面白い試みだと思いました。