2017年10月21日土曜日

アトピー性皮膚炎の新規治療薬の治験をしています

たいへん名誉なことに、アトピー性皮膚炎治療研究会第23回シンポジウム(来年ですが)で、今井がアトピー性皮膚炎の最新の治療について講演させていただける予定となりました。・・・みんな、このブログが乾癬外来のブログだと思っているのですが、このブログは乾癬・アトピー外来のブログです!

アトピー性皮膚炎の機序が徐々に解明されつつあり、簡単に書くとIL-33やTSLPといった上流のサイトカインがリンパ球を活性化して、IL-4、IL-13、IL-31といったサイトカインを産生させることでアトピー性皮膚炎を引き起こしていることが判明してきました。このようなアトピー性皮膚炎の研究では、私たち兵庫医科大学皮膚科もIL-33がアトピー性皮膚炎を引き起こすことができるという研究 (Imai Y, PNAS, 2013) を行っております。このようにアトピー性皮膚炎の原因となるサイトカインが判明してきたことや、皮膚科領域では乾癬に対してサイトカインに対する抗体製剤(バイオ製剤)がきわめて有用であることから、アトピー性皮膚炎においても、上記のようなサイトカインに対する抗体が有用であることが想像されます。実際、治験登録サイト(ClinicalTrials.gov)を見ると、実に様々なバイオ製剤が既に治験に入っていることがわかります。ぱっと目につくものだけでも、こんなにあります。あと1−2年で、アトピー性皮膚炎の治療はまったく異なる新時代へ移行するのかもしれません。


機序
一般名
経路
進捗
コード
製薬会社名
IL-4/13受容体抗体
Dupilumab
注射
FDA認証
SAR231893
サノフィ
IL-13抗体
Tralokinumab 
注射
CAT354
アストラゼネカ・LEO
IL-31受容体抗体
Nemolizumab
注射
CIM331
中外
IL-33抗体
未定
注射
ANB020
AnaptysBio
TSLP抗体
tezepelumab
注射
AMG157
アムジェン



ちなみに、当院ならびに関連病院の明和病院で、アトピー性皮膚炎の新薬(現在当院でやっているのは 上記のうちトラロキヌマブになります)の治験を実はまだ受付中ですので、難治性の18歳以上の若いアトピー性皮膚炎(慢性湿疹ではなく、pureなアトピー性皮膚炎の患者さんでお願いします)の患者さんでお困りの先生は、ご紹介のほど、よろしくお願い申し上げる次第です。この治験は患者さんの集まりが良好なため、早期終了の予定ですが、まだエントリー可能です。



2017年10月10日火曜日

中部総会に参加しました

第68回日本皮膚科学会中部支部学術大会に参加してきました。

 開業皮膚科医向けの講習会という意味合いも兼ねた学会ですし、ほとんど知っている話ばかりだったのですが、知識の再認識ができました。また、私が留学中にアメリカで研究していたのは免疫チェックポイント阻害剤だったのですが、組み合わせの問題で、オプジーボではなくキイトルーダが肺がん領域では第一選択となりつつあるそうですが(他科領域は勉強しに行かないと知識が増えません)、当科でも悪性黒色腫に対して、キイトルーダの投与に対応しています。

 また、点眼剤の接触皮膚炎の学会発表を行いました。アレルギーの原因は様々で、点眼薬で主成分ではなく防腐剤による接触皮膚炎が多いのですが、しっかりパッチテストを行うと、防腐剤ではなく主成分が原因であることが判明し、患者さんは防腐剤入りの点眼薬も継続使用が可能でしたので、何気ないパッチテストですが、患者さんのお役に立てたかなと考えています。

2017年10月2日月曜日

第6回日本眼科アレルギー講習会に参加してきました

今井です。
東京・品川で開催された第6回日本眼科アレルギー講習会に参加してきました。

乾癬はバイオ抗体製剤で皮膚炎がほぼ無い状態にすることも可能となってきましたが、アトピーでは開発が遅れておりました。
現在ではアトピー性皮膚炎はIL-4やIL-13といったサイトカインの疾患への関与が明らかとなり、やっとヒトに応用されつつあり、皮膚科ではアトピーに関してこれらのサイトカインを標的としたバイオ抗体製剤を用いた新規治療法の治験が進行中です(当院でも、重症のアトピー性皮膚炎の患者さんは治験へのエントリーが可能です)。

さて、これらのアトピー性皮膚炎関連サイトカインは、アレルギー性結膜炎やアトピー性角結膜炎でも同様なのでしょうか?私たちは、当院眼科などとの共同研究で自然リンパ球やIL-33が、(アトピー性皮膚炎だけでなく)アトピー性角結膜炎などの眼科アレルギー疾患にも関与することを示しています(Scientific Reports 7, Article number: 10053)。この第6回日本眼科アレルギー講習会では順天堂大学の浅田先生が、マウスの実験系で、IL-25ノックアウトマウスやTSLPノックアウトマウスでは結膜炎が発症したがIL-33KOマウスでは結膜炎が有意に抑制されたという分かりやすいconvincingな御講演をされており(論文にももうなっているそうです)、皮膚科領域だけではなく、眼科領域においてもIL-33などの炎症性サイトカインが誘導するIL-4やIL-13といったサイトカインがアトピーに関与していることが確実になってきていると感じました。今まで治らなかった疾患が治るようになるという大きな変化が、もうすぐアトピー性皮膚炎にもやってくるかもしれません。最短でも4−5年後かとは思われますが・・・・