2018年10月28日日曜日

第69回日本皮膚科学会中部支部学術大会で講演しました。

乾癬・アトピー外来担当の、今井です。
このたび、第69回日本皮膚科学会中部支部学術大会(2018年10月27日(土))、大阪国際会議場(グランキューブ大阪)にて乾癬の講演を行いました。内容は、米国留学していたころの昔話だったのですが、実は日本に帰ってきて3年、やっと論文になったという、とんでもなく気が長い話でした(笑)。研究を引き継いでくれたゲシュマン先生に感謝です(ちなみに、この人はドイツ系アメリカ人で、名前のspellingのssの部分がサインではちゃっかりドイツ語のβになっているというのが印象的な方でした)。

秋の学会シーズンということもあり、学会の講演の機会もいくつか頂いております。主要なものでは、次回は11月18日に、第48回日本皮膚免疫アレルギー学会総会学術大会で講演を予定しております。アレルギー学会なら主役は当然アトピーで、その話題はデュピクセントなのですが、なぜか私の講演は初めて乾癬でバイオ製剤を処方する先生のための教育的な内容というやつになってます。まあ、学会が複数合併して、名称に「免疫」も増えたので、乾癬が紛れ込んでもいいのかもしれません。


2018年10月14日日曜日

第82回日本皮膚科学会東部支部学術大会でシンポジウム講演をしました

今井です。2018年10月6日(土)に、アトピー、魚鱗癬、乾癬、膠原病の「アラーミン」に関する基礎医学的な内容で、第82回日本皮膚科学会東部支部学術大会(北海道、旭川市)でシンポジウム講演をしてきました。シンポジストの先生方が皆様とても有名な先生でしたので、自分の講演内容をどうしようかと思いましたが、結局は私達の研究データを出すことになりました。また、違うエリアの皮膚科の学会に参加することで、私自身、普段は聞かない先生の講演も聴けたので、かなり勉強になりました。
ちなみに、中部支部総会でも乾癬の講演をする予定ですが、ちゃんと今回の講演と内容が被らないようにしないと。。。。





2018年10月1日月曜日

ノーベル医学生理学賞に京大・本庶佑特別教授 ー乾癬との関連ー

京都大学の本庶佑先生が、PD-1の研究で、画期的ながん免疫療法(免疫チェックポイント阻害剤)である「オプジーボ(ニボルマブ)」の開発でノーベル医学生理学賞を受賞されました。きっと今年は受賞されると思っていたので、日本人として嬉しいです。さて、このPD-1の研究ですが、現在は非常に幅広く行われております。皮膚科への影響も非常に大きな貢献でありまして、以前の治療法では難しかった悪性黒色腫の治療ですが、今では当科でも「免疫チェックポイント阻害剤」を使用して治療に当たっております。このように、最初のPD-1発見時は何の役に立つかも分からなかったという基礎的な研究が、最終的に臨床応用ー日本でも保険適応ーくらいまで行くとノーベル賞になるという、なんだかノーベル賞のお手本のようなお話であります。
ちなみに、私の研究内容の中に、この抗PD-1抗体の副作用として、かえって乾癬が悪化するメカニズムを解明したというものがあって、同じ事を研究していた韓国のグループよりも半年早く論文発表させていただいております(Imai Y, PD-1 regulates imiquimod-induced psoriasiform dermatitis through inhibition of IL-17A expression by innate γδ low T Cells, J Immunol, 195,421-425, 2015)。免疫が活性化する薬なので、ついでに乾癬が出てきても仕方ないってことですね。この話のポイントですが、ちゃっかり本庶佑先生からPD-1ノックアウトマウスを分与していただいて、ちょっと実験を行っただけ、ということです。このように、研究というものは、以前のすばらしい研究業績の上に、少しづつ積み上げられていくものです。このような星の数ほどある研究の土台となっている「ブレイクスルー」な研究がノーベル賞になるのだという、本当に、「どんな発見がノーベル賞なの?」という答が、これほど明確であるような研究はないと思います。

・・・ちなみに、本庶佑先生が発見したPD-1に対する抗体と、同時にノーベル賞を受賞したジェームズ・アリソン先生が発見したCTLA-4に対する抗体は別の仕組みで癌に効くので、悪性黒色腫の治療としてこの2つの薬を同時に投与するという最強の治療法があります(日本でも保険適応、当科でも使用可能)。特に、抗PD-1抗体では効果が弱いタイプの悪性黒色腫に対しては、この同時投与によってPD-1抗体が効くようになることが判明しており、ほんの数年で、皮膚科の悪性黒色腫の治療も大幅に進歩したと思います。少し前までは「手術の達人」であることが悪性黒色腫の治療では大切だったのに、今では「免疫学チェックポイント阻害剤の副作用管理=ほぼ膠原病内科?」の、いわゆる免疫学をちゃんと理解している医師であることも悪性黒色腫の治療では大切というように「常識」がひっくりかえってしまったのですが、なにせノーベル賞というのは、それだけのインパクトのあるものだと思います。