2021年2月20日土曜日

今井のアトピー性皮膚炎に関する論文が国際雑誌に掲載されました。

実際のアトピー性皮膚炎患者さんに2型自然リンパ球(ILC2)が関与していることを示した論文になります。ILC2が増殖するにはIL-33とIL-4の両方が必要ですが、デュピルマブをアトピー性皮膚炎患者に投与すると、予想の通りILC2が減少しました。また、ILC2の減少が大きかった患者さんや、もともとILC2が多くて減少する余地があった患者さんは、デュピルマブの効果が高かったことも判明しました。2013年から続く自分のILC2研究が、これで完結したという感じというか、今まで動物実験だったりin vitroだったりしたことが、綺麗に実際の臨床でも言えることが判明しました。

雑誌:JID Innov.

https://www.jidinnovations.org/article/S2667-0267(21)00003-5/fulltext

2021年2月8日月曜日

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症(Novel Coronavirus disease 2019, COVID-19)が流行する中、乾癬に対する生物学的製剤はどれくらいのリスクがあるのか?

(論文紹介)他科領域と同様、乾癬の生物学的製剤を使用中であっても新型コロナウイルスが重篤化しやすくなるわけではない、ということが判明しました。コロナ禍が終わるまでバイオ製剤の投与は辞めておこうというアイデアもありますが、そんなに気にしなくて良さそう、という論文が相次いで発表されています。


イタリアにおける、生物学的治療を使用している尋常性乾癬患者6501例の検討では

COVID-19による入院の発生率( 1万人月あたり)

乾癬患者 11.7(95%CI,7.2~18.1)

一般集団 14.4(95%CI,14.3~14.5)

COVID-19による死亡の発生率

乾癬患者 1.3(95%CI,0.2~4.3)

一般集団 4.7(95%CI,4.6~4.7)

であって、乾癬患者におけるCOVID-19の転帰に生物学的製剤の有害な影響は認められなかったと報告されています(Gisondi P, JACI 2020)。


また、25カ国のCOVID-19に罹患した乾癬患者 374 例の検討では、生物学的製剤の使用は、非生物学的全身療法に比べて入院リスクが低かった(OR = 2.84;95%, CI = 1.31-6.18)。生物学的製剤のクラス間では有意差なし、という論文も発表されています(Mahil SK, JACI 2020)。

以上から、コロナウイルス禍であっても、皮膚科医は皮膚炎をしっかり治療するべきと結論されています。日本人のデータではありませんが、参考になる論文だと思います。

一方、長期のステロイド内服はコロナウイルス感染症の悪化要因であることが多数報告されており、このような薬が必要な患者さんには、注意が必要と思われます。コロナウイルス感染症による重症化リスク増加を考えると、蕁麻疹やアトピー性皮膚炎に安易にステロイド内服を処方することは、現在のコロナ禍においては慎重な検討が必要と考えています。












 

生物学的製剤投与中の患者さんに、コロナウイルスのワクチンは禁忌なのか?

いいえ、ワクチン接種可能とIPC(*)から声明が出ています。

アトピー性皮膚炎、乾癬に関わらず、バイオ製剤投与中にコロナウイルスのワクチンは禁忌ではありません。

不可能なのは、生ワクチン(風疹麻疹MR、水痘、おたふく、BCG、ロタ)などです。

http://blog.dermatology.network/2019/02/blog-post_19.html

不活化ワクチン(インフルエンザなど)は、いつでも投与可能です。また、新型コロナウイルスのワクチンは、ワクチンの治験では生物学的製剤投与中の患者はエントリーされていないのですが、現在開発中のいずれもが生ワクチンではありませんので、理論上投与可能と考えられます(生ワクチンはバイオ製剤投与中の患者さんには禁忌です)。乾癬性患者全員がワクチンにアクセスできるようにするべきとIPC(*)は考えています。(*)これらの情報は、https://www.psoriasiscouncil.org/ から翻訳しました。