(論文紹介)他科領域と同様、乾癬の生物学的製剤を使用中であっても新型コロナウイルスが重篤化しやすくなるわけではない、ということが判明しました。コロナ禍が終わるまでバイオ製剤の投与は辞めておこうというアイデアもありますが、そんなに気にしなくて良さそう、という論文が相次いで発表されています。
イタリアにおける、生物学的治療を使用している尋常性乾癬患者6501例の検討では
COVID-19による入院の発生率( 1万人月あたり)
乾癬患者 11.7(95%CI,7.2~18.1)
一般集団 14.4(95%CI,14.3~14.5)
COVID-19による死亡の発生率
乾癬患者 1.3(95%CI,0.2~4.3)
一般集団 4.7(95%CI,4.6~4.7)
であって、乾癬患者におけるCOVID-19の転帰に生物学的製剤の有害な影響は認められなかったと報告されています(Gisondi P, JACI 2020)。
また、25カ国のCOVID-19に罹患した乾癬患者 374 例の検討では、生物学的製剤の使用は、非生物学的全身療法に比べて入院リスクが低かった(OR = 2.84;95%, CI = 1.31-6.18)。生物学的製剤のクラス間では有意差なし、という論文も発表されています(Mahil SK, JACI 2020)。
以上から、コロナウイルス禍であっても、皮膚科医は皮膚炎をしっかり治療するべきと結論されています。日本人のデータではありませんが、参考になる論文だと思います。
一方、長期のステロイド内服はコロナウイルス感染症の悪化要因であることが多数報告されており、このような薬が必要な患者さんには、注意が必要と思われます。コロナウイルス感染症による重症化リスク増加を考えると、蕁麻疹やアトピー性皮膚炎に安易にステロイド内服を処方することは、現在のコロナ禍においては慎重な検討が必要と考えています。